時を超えた静寂の中で過ごすひととき■「矢中の杜」(旧矢中邸)を見学させていただきました

先日、茨城県つくば市にある「矢中の杜(やなかのもり)」(旧矢中邸)を訪れる機会がありました。歴史ある建造物と自然が織りなす空間は、想像以上に心落ち着く場所でしたので、その魅力をご紹介したいと思います。

矢中の杜はつくば駅から車を走らせること約22分、筑波山のふもと、北条商店街の一角にあります。北条商店街共用駐車場(茨城県つくば市北条24)に車を停め、向かいます。矢中の杜には駐車場はありませんので、こちらの駐車場を利用してください。

こちらが北条商店街共用駐車場(別日に撮影)
北条商店街にはつくば道の道標もあります!(別日に撮影)

駐車場から商店街を400mほど歩くと、「矢中の杜 本日公開」の立て看板があります。
ここが目的地の「矢中の杜」。立て看板の横を抜けて進むと緑に囲まれた中に、威厳ある屋敷が姿を現します。

立て看板の先に進みます。
こちらが矢中の杜

毎週土曜日に邸宅公開を行っており、邸宅維持修繕協力金500円を払うことで見学することができます(中学生以下無料)。11時と14時にはガイドツアーも行われますので、参加を希望される方は事前予約しておくと良いでしょう。私は残念ながら時間が合わず、ガイドツアーには参加できませんでした。

矢中の杜は、セメント防水剤「マノール」を手掛けた建材研究者である矢中龍次郎氏によって、昭和13年から28年まで15年をかけて建設された昭和の邸宅で、約770坪の広大な敷地内に本館(居住棟)と別館(迎賓棟)が現存しています。

雨の日の午後だったためか、見学者は私と息子のほかは一組のみ。
本館へと足を踏み入れると、そこには時が止まったかのような静かな空間が広がっていました。

玄関

ボランティアガイドの方がところどころで案内して下さり、日本の高温多湿な気候に合わせた防水防湿を考慮した換気用スリットなどの仕組みについても説明いただきました。

照明の上の格子部分が換気スリット

本館の屋根は陸屋根となっており、防水材の研究をされた矢中龍次郎氏ならではの施工を見ることもできます。

本館は居住棟であり、矢中氏の過ごした居間や書斎のほか、女中室や台所、炊事場、水回りなどがあります。
襖や欄間など美しいデザインの建具や、矢中氏も座っていたという籐椅子などの家具、電化製品など、随所に見どころがありますが、特に印象的だったのは、廊下から望む庭園の景色です。座ってじっと眺めていると、心が穏やかになっていくのを感じました。

居間
書斎
座敷
矢中龍次郎氏が使用していた籐椅子
廊下から庭園を望む
女中部屋
台所
炊事場

別館は皇族のような方を迎賓できるようにと建てられており、豪華に彩られています。板戸絵や調度品など、こだわり抜いた見どころが満載です。

食堂
暖炉のある応接間
床の間のある応接間

矢中の杜は2011年に国登録有形文化財に登録されましたが、日本の気候風土に配慮した実験的な住宅としての学術的な意義や、優れた意匠が改めて評価され、2023年には国指定重要文化財に指定されています。
伝統的な和風建築をベースとした上で、矢中氏の研究成果が反映された建築のほか、各所にみられるこだわりの調度品など、じっくりと時間をとって見学していただきたい場所です。

つくば市北条の素晴らしい文化遺産。毎週土曜日開館です。ぜひ行ってみて下さいね!

矢中の杜(旧矢中邸)
住所:茨城県つくば市北条94-1
アクセス:つくばエクスプレス線「つくば駅」より車で約22分
開館日:毎土曜日 11:00~16:00 ※ガイドツアー(定員あり)は毎土曜日11:00~、14:00~の2回 ※イベントなどで公開日が変更になる場合あり
料金:一人500円(邸宅維持修繕協力金として・中学生以下無料)
ホームページ:https://www.yanakanomori.org/

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。